おかしな一家(全文) リニア新幹線を使えば、東京から福岡まで二時間ちょっとで着いてしまう。それなのに、地下ばかり走るから退屈だという声が聞かれるのは、あらゆるものが加速度的にスピード化していく中で、移動時間の短縮化にはまだまだ不満を持つ人間が多いということだ。 しかし光輝の目には、暇を持て余し... 続きをみる
2019年9月のブログ記事
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おかしな一家(最終) 「仁ちゃん。あなたは二〇歳で結婚しないで、三〇歳で結婚するの。そのお相手はここにいる早苗さんだけれど、彼女はすでに人妻だわ。なら、どうしましょう。簡単よ。今日、早苗さんから皮膚の細胞を少しだけいただいて、伯父さんにクローンをつくってもらうの。みんなで早苗さんのアバターを育てて... 続きをみる
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おかしな一家Ⅲ 車はスクリーン壁の狭間を通過してしばらく畑の道を走り、それから鬱蒼とした森に入った。林道を五分ばかり走ると開けたところに出て、田んぼには稲が青々と育っている。今度こそは本物であろう門の前で停止し、鉄扉は音もなく開く。そこから屋敷の玄関までは五分ほどかかった。古びた洋館だが、贅を尽... 続きをみる
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おかしな一家Ⅱ 仁は背の高い草を掻き分けながら草原を歩き始めた。草に触れると指が切れそうな痛さを感じるが、すべては仮想現実で、本物の草が生えているわけではない。仁の姿は時たま草に隠れて見えなくなるものの、ゾウが付いていたので見失うことはなかった。途中で、ヌーやシマウマの群れに遭遇したが、これはど... 続きをみる