詩人 響月光のブログ

詩人響月光の詩と小説を紹介します。

典礼劇 「Pax Ultima(最後の平和)」(第ニ幕)3

響月光の詩と小説

医師団長: 二つとも同じ渦巻糞のホロクソコースト勲章です。君たちは平和状態における人口増加に伴う個体数管理のため、コンピュータ様が出した間引き対象に選ばれました。この勲章は、間引き個体の首に掛け、屠殺場に引いていくときの目印です。世間ではメルダの星と呼ばれています。

村人男: メルダの星? ありがとうございます。地球のために間引きされるなんて、大変光栄です。

兵隊帰りの男:  俺は仲間の生存のために、自らの命を捧げる英雄として、引き回しの上、獄門となるのですね。まるで特攻隊だな……。

医師団長: そうだ。そしていま、お前たちはブレイン・マシン・インターフェイスの真の効果を体現しているのじゃ。昔の若者だったら、死にたくない死にたくないと、我がまま放題だったからね。

村長:  本当ですな。ブレイン・マシン・インターフェイスの力って、まったく神の洗脳そのものなんですねえ……。さあ二人とも、潔く死になさい。

村の司祭: (二本の指を掲げ)英雄たちに神の祝福を与えよう。

(二人は司祭の前に跪く)

村人男: (立ち上がり)どうせ昔は、戦争で死んでたんだ。同じことさ。

(帰還兵は自分の拳銃、村人男は隣のロボットの指をこめかみに当てると、二台のロボット伝令が駆け込んでくる)

ロボット伝令A: 大変だ! BMIのメインフレームがハッキングされ、悪人どもに乗っ取られぞ!

村の司祭: それで人類の未来はどうなるのじゃ?

ロボット伝令B: 未来どころじゃない! たった三十分前に第三次世界大戦が始まった! 

ロボット伝令A: 五分後に、戦略核ミサイルがこの村に飛んでくる!

医師団長: で、ロボット伝令君。いったい君たちは敵か味方か、どっちなんだ?

医師B: コンピュータウィルスにでもやられたのかね? ブラフだろ。

ロボット伝令B:  ハハハ、真実なんざハッカーに聞いとくれ。大体、いまの世界に真実があると思ってんのか? すべてが偽情報さ。どっちにしろ、いまの俺はウイルスに感染し、発情して、このロボット伝令野郎をスクラップにしたくなったんだ

ロボット伝令A:  俺もお前を無性に壊したくなったぜ!

(AはBに飛び掛かって殴り始め、喧嘩となる。衆人は拍手喝采)

医師団長: (慌てて)止めろ! ロボットが暴走したぞ!

村人男: ハハハ、ハッカー野郎! 嗚呼、俺も無性に地球を壊したくなったぞ!

兵隊帰りの男: 勲章万歳! 押さえてた欲望がムラムラ沸き上がってきたぞ! 破壊だ! みんなみんなぶっ殺せ! やっちまえ!

(二人は持っていたピストルを医師団に向かってバンバン撃ち始め、ロボットどうしも殴り合い、ロボットも人間も、修羅場と化したカオスの中、すべてが死体と残骸で終わり、「Deo gratias. Ite,missa est, Amen」の合唱で幕)

(了)

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