詩人 響月光のブログ

詩人響月光の詩と小説を紹介します。

エッセー「アガスティアの葉」& 詩

エッセー
アガスティアの葉


 古代南インドの仙人(リシ)は、すべての人間の過去、現在、未来を知っていて、これを記したヤシの葉「アガスティアの葉」が各地に残っている。一時日本でもブームになり、多くの観光客が現地のト占所に訪れて占ってもらった。「当たった」と喜ぶ人もいたし、「インチキだ」とがっかりした人もいたらしい。


 アガスティアの葉の真偽は分からないが、これが本当だとすれば、人間の運命はあらかじめ決まっているということになる。ならばこれは、ライプニッツが主張した「予定調和説」のエビデンスかもしれない。「予定調和説」では、すべての人間は自分自身にのみ影響し、独立しているという。神様がそれぞれの人間を造るとき、その精神は決して他の精神と相互作用しないようにした。神様は一人ひとりの人間を計算しつくして造ったのだから、彼らは単体(モナド)として行動し、最も調和のとれた世界を創ることが可能なのだ。つまり人間は神の見えざる手の中で転がされながら、神の見えざる意思で蠢いていることになる。誰かが誰かに影響されても、単なる見かけにすぎない。人間どうしが影響し合うことはなく、環境と人間が影響し合わないのなら、アガスティアの葉(宗教は異なっていても)は人間一人ひとりの設計図であり、指示書であり、プログラムであり、人間は単にあらかじめ引かれた軌道の上を走り、死を迎えることになる。神の意思は、人間風情が勝手に変更することはできないというわけだ。


 ライプニッツはキリスト教徒だから、「神の創った宇宙は完璧で不可侵」の教え通り、予定調和説を宇宙にまで広げた。神は宇宙創造のプロジェクトリーダーで、きっと宇宙の隅々にまで神の遺伝子(設計図・DNA)がばら撒かれたに違いない。だから、予定調和で満たされた宇宙は神の設計通りに順調に運転され、永久にクシャることはない。当然だが、宇宙の端くれである地球もいたるところにその遺伝子が散りばめられている。我々は地球を生命体だとは思っていないが、神から見れば人間も生物も岩石も地球も、みんな同じ遺伝子を持ったお仲間(被造物)だ。生物だろうが無生物だろうが、神にとってはどうでも良いこと。生命体も所詮は物理法則に支配されていると量子力学のシュレーディンガー先生も言っている。その物理法則では、星々は互いに影響し合うように見えても、それは人間の視点で神の視点ではない。神の思惑通りにそれぞれが動いているというだけの話だ。


 ならば生も死も、繁栄も滅亡もどうでも良いことになる。そんなのは、単なる人間の感傷だ。被造物らは互いに相互作用をしないで、影響し合うことなく神の意思に従って勝手に蠢いていれば良い。予定調和で蠢いていれば、全体的に平穏で結果オーライとなり、それでいいじゃないかというわけだ。


 だから地球に起こるすべての現象も、予定調和の中で起きていることになる。地面が揺れれば、それは地震の遺伝子だ。火山が爆発すれば、それは火山の遺伝子だ。それらは定期的にガス抜きを繰り返して、予定調和に貢献している。地球が閉鎖空間で、異常に繁殖した生物が腹を空かして絶滅するのも、生き残りの弱肉強食が繰り返すのも、地球生態系の遺伝子だ。きっと人間が地球生態系の頂点だと勘違いするのは、傲慢な人間遺伝子のせいだろう。神の視点からは、数で圧倒的に勝る微生物が主役に決まっているけれど、支配しているのは創造主たる神だけで、被造物間に主役・脇役の関係などあるはずもない。


 この論理で行くと、誰かが誰かを殺したって偶然性も相関関係もなく、殺す人間の遺伝子がそうプログラムされていて、殺される人間の遺伝子がそうプロラムされているから、予定調和の範囲内で殺人事件は起こったのだ。殺人は殺人者のせいではなく、あらかじめそいつに組み込まれている遺伝子が原因だ。この法則は生きとし生ける物すべてに当てはまるから、生命が誕生して以来の壮絶な殺し合いは、地球という閉鎖空間が平穏に持続するための予定調和の設計図に従っているだけということになる。もちろん人間も、神が与えた人間遺伝子により忠実に活動しているわけだから、発生以来連綿と殺し合いを繰り返しているのである。そして殺された連中は、あらかじめ貧乏くじを与えられた哀れな落伍者であることを知らず、たまに占い師に「あんたもうすぐ死ぬよ」と指摘されたりする。


 ひょっとしたら、占い師の親分であるノストラダムスの大予言は、神の遺伝子を解読したものかもしれない。アガスティアの葉が人間一人ひとりの設計図だとすれば、ノストラダムスの大予言はヒト属および地球の設計図だ。ならば2069年に巨大隕石が地球に落下すると騒ぎ立てる一部メディアの言が正しいことになり、神様は地球生態系の定期的リセット(オーバーホール)をその年に行う予定だということになる。しかし、そうは問屋が許さない。我々には人類の英知を結集した偉大な発明品である「核兵器」と「ミサイル」があるではないか。これらの発明品は元々、神のご意思によって、人間どうしの殺し合いを効率的に行うために遺伝子に組み込まれたものだったが、人類はようやく反抗期にまで成長しており、「神は死んだ」と叫びながら、生みの親たる神の思惑通りにはなるまいと、いろんな抵抗を試みている最中だ。生みの親、育ての親のありがたみも忘れて徹底的に反抗するのが反抗期だから、ここはひとつ、がむしゃらに反抗してみようじゃないか。


 しかし相手は宇宙の支配者だ。人間風情が勝てる相手ではない。当然のことだが、人間が神と戦って勝利し、宇宙の支配権を奪おうという話でもない。我々が戦うべき相手は、神が仕向けた鉄砲玉(巨大隕石)一つなのである。ラッキーなことに、我々には神のご意思のもとで造られた人間遺伝子があり、互いに集団で固まって攻撃し合い、滅びる特性を持っている。こいつらは常に和合分散を繰り返しており、相手が強いと仲が悪くても一時的に和合し、団結して強い相手に立ち向かう傾向がある。ということは、地球生物を滅亡させる巨大隕石という敵に対して人類は和合し、一丸となって戦うことができるということだ。


 このとき使用兵器のベクトルは、強い相手に向かって一本化される。核兵器だって、いつでも飛び出る状態にはなっていても、相手が決まらなければ方角はバラバラだ。しかし相手が巨大隕石と決まれば、そいつらのベクトルは隕石の方向に一本化されるだろう。ただ一つの心配事は、来るべき2069年の前に人類が人間遺伝子に翻弄されて自爆行為を起こしてしまうことなのだ。ハルマゲドンの前に人類が仲間割れを起こし、核を使っちまえばアウトだ。そこで僕は提案する。来る2069年の大隕石襲来に備え、世界中の核兵器を南極の分厚い氷の下にストックし、これ以上の製造はストップしよう。これは核廃絶ではない。核を2069年に向けて備蓄するということだ。そして世界中の科学者は、ストックされた核を使って巨大隕石の破壊方法を考えよう。いままで各国とも核開発、ミサイル開発にしのぎを削ってきたのだから、そんな技術開発は簡単だろう。


 さあ、地球市民の皆さんの前に、巨大隕石という難敵が現れたのである。良い子の皆さんは仲良くして、この敵に立ち向かいましょう。僕は、このプロジェクトの成否に関わらず、少なくとも2069年まで地球上で核戦争は起きないことを保証します。皆さん、人類を滅亡させないために、みんなで一致団結しようじゃありませんか。


(なお、このエッセーは「アガスティアの葉」および「ノストラダムスの大予言」が真実であるという仮説を基にしたものですので、元ネタがイカサマであった場合は、このエッセーもイカサマとなります。ザンネーン!)






熟年離婚


君はいつも分からない音楽を聴いているね
あなたはいつもおかしな音楽を聴いている
君の部屋には趣味の悪い絵が飾ってあるね
あなたの部屋にあるのは意味不明なアート
君はなぜ、いつも海に行きたがっているの
あなたはなぜ、高い山に登ろうとするのよ
君の服装は少しばかり派手過ぎやしないか
あなたの服は地味でいつも似たり寄ったり
君はなんでつまらない雑誌を買ってくるの
あなたはなんで訳の分からない本を読むの
君はいろんなニセモノを買って身に付ける
あなたはエンゲージリングも填めないわね
下を見ろよ、若い夫婦が腕組んで歩いてる
仲が良くて羨ましいこと、嫉妬するくらい
僕たちにもきっとあんな時代があったんだ
あら全然記憶にありません、あしからず…
別れる前に、少しばかり歩いてみないかね
いいわよ、あの人たちのように腕を組んで



積み木


またひとつ 悲しみを乗せてみよう
ゆっくりと 落ち着いてあせらずに 
静かに なかばあきらめて
バランスを考えて 崩れないように
感情を押し殺して 冷静に 沈着に
ほら まるで奇跡のように またひとつ
上手に乗せたら あとはただ はしゃがず
息をひそめて 次のかけらを待とう
またすぐに来るだろう
崩れたらゲームは負けだ
だからひたすら静かに こころを落ち着かせ
噛み潰すことなく
無心になって……

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