詩人 響月光のブログ

詩人響月光の詩と小説を紹介します。

エッセー「 象徴としてのグレタ・トゥーンベリ」 & 詩ほか


獄門星


恐竜どもが闊歩していたとき
ちっぽけな脳味噌は
宇宙の戯事であるこの星の役割を
これっぽっちも考えなかった


邪悪な肉食竜たちよ
おまえの祖先は
おまえを皆殺した飛礫(つぶて)と同じに
どこか平和な星の自浄作用で
瘡蓋(かさぶた)が剥がれて宙に迷い
エーテル河の流れに乗って
はるばるやってきたのだ


漂着したそいつは異臭を放ち
毒々しい酸素や濁った熱水を友に迎え
じくじくふやけた肉塊に膨れ上がり
その心は猛毒の硫化水素を糧にして
生き残るためのずる賢さを育んだ


そうだ、瘡蓋由来の用無しどもは
喧嘩好きの乱暴者となり
生きる価値を見出したのだ
最初はアメーバとして巨大化を目指し
出会うすべてを食らい、陵辱し、我が物にし
要らないものは汚物ともども吐き出した


この星の生きとし生けるものは
清廉たる宇宙から排除された
つまはじき者を母としている
だからその悲しい性を受け継いで
奪った命を瘡蓋に加工し
ケツの穴から吐き出し続けるのだ
嗚呼、彼方にあるべきイデアの星々から
芥として捨てられた
宇宙デブリの末裔たち
その痕跡らしき忸怩たる感性よ…
にじみ出る五臓六腑からの悪臭よ、悪寒よ、自己嫌悪よ!


地球という悪魔星は
逃げ出すことのできない孤立星
根を張る連中はどいつもこいつも
無用な瘡蓋として降り注ぎ
しっかり根付いた害来種
生きることは殺すこと
殺すことは生きること
殺し合うのが存在証明


されど命短し、罪とて同じ
旺盛な悪事も、つかの間の快楽も
やがては消え去る運命なのだから…
けだし愛というやつも欲望の一つなら
悲しい性を背負ってあり続けるに違いない
イデアの星々の何かしらを夢想しながら
霞のように、幻のように
この星では何も得られないという…





クライマー魂


人を寄せ付けない
魔の山の絶壁が
朝日で金色に光っていた
多くのクライマーが
気高い輝きに心を奪われ
あげくに魂までをも奪われた


ある日山の頂に
コーンのような愛らしい
白い笠雲が掛かっていた
斬捨御免の山が発心し
お遍路にでも出かけるか…


不思議なことに
多くのクライマーが
ピッケルをキラキラ振り回し
嬉々としながら
笠雲の頂を目指していた
彼らは魂となって魔の山を征し
さらなる高みに挑戦している
僕は涙を流しながら
大声でエールを送った
嗚呼、偉大な挑戦者たちよ
常に上を目指し続ける君たちは
なんて幸せな人生だったろう


…それにしても、僕はなぜ未だに
背中を丸めて目線を落とし
砕け散った幸せの断片を
キョロキョロ探し続けているのだろう
遠い過去ばかりに目を向けて
心を砕かないように恐る恐る
小さなつるはしを振り下ろす
臆病者の考古学者みたいに…






エッセー
象徴としてのグレタ・トゥーンベリ


 昨年のCOP26は不満足な結果に終わったが、これは予想通りだった。参加国それぞれの経済的な思惑が絡んでくる話なので、ああした会議で目的が達成されることはないだろう。


 しかし人類のやらかした事とはいえ、地球温暖化はもはや科学現象なので人の都合には合わせてくれない。温暖化は制御できない時代に入りつつある。このままだと、きっと多くの人々は奈落に落ちていくだろう。専門家のご意見が「想定外」ではないのだから、政治家も後になって想定外とは言えまい。そのときには地球から「落ちる者」と「留まる者」との選別の時代が始まっている。ノアの方舟のような事態が恐らく起こるのだ。


 昔、神と契約を交わして幸せを得ようとした種々の民族がいた。しかし神は天上にいるので、神と話のできる代表が必要になった。力を持つ者が超能力を標榜し、その任を担う。彼は神の力を得て地域を治めたが、神の言葉は彼のやりたいことだった。そして彼は事実上の神となった。地域内の混乱や紛争は「神の言葉」により平定し、時たま現れる反逆者や予言者も、神のお告げで首をはねた。


 ところが周りの地域も、それぞれ違う神を掲げ、神の代理人たちは自分の神を広めることを口実に戦いを仕掛け、次々に打ち負かしていった。大国が小国を呑み込む形で、世界中に文明が形成されていく。今の世界も、基本的にはこのプラットホーム上にできている。ロシアのクリミア併合が最近の出来事だ。現在、神を捨てた国(文明)もあれば、神を大事にしている国もある。しかし、神が死んでも、その代理人的な存在がなければ国は滅びてしまう。それがプーチンのような統率者といわれる人たちで、自分が神になろうとさらなる努力を厭わない。


 だから教祖はもちろん、王様だって独裁者だって、大統領だって首相だって、統率者の背後には神のような象徴が背後霊としてこびりついている。日本の首相だって、始動当時は後光が差しているから、国民の支持率が上がるわけだ。統率者は、国民の支持を食って生きている半獣半神の生き物である。当然、国民の夢を食ったらバクになってしまう。


「人は象徴を操る動物である」と哲学者のカッシーラは言った。国民は彼らの能力のことは分からないから、神のような者として信頼し希望を託すのだ。もちろん、国民が自分の生活が豊かになることを願っているのは昔も今も変わらない。だから国全体が貧窮すると、ヒトラーや毛沢東のような超人気の半獣半神が現れ、前者は戦争に敗れて獣となり、後者は戦争に勝って神となった。


 一部の階層に寄与する政権も多いが、基本的な役割は統治する国民全員の生活を豊かにすることで、内外的に色々な方策を行う。しかし国民一人ひとりの境遇や能力は異なるため、富の偏りが生じて、富める者と貧しい者が出てくる。貧しい者の目には統治者の後光は消えて単なる貧乏神となり、権威主義国ではテロや内乱、領土紛争が勃発し、民主国では政権交代が起こる。


 つまり太古の時代から、この形態を保ちつつ人類は増え続けてきたけれど、それは人類の進化とは言えないだろう。円環を回り続けているだけの話だ。グローバル化により地域ごとの独自なシステムが平準化しても、沢山あった円環が一つに大きく纏まっただけだ。だから、ちょっとのことでたちまち分裂して元に戻り、馬脚を現して諍いが始まる。


 産業革命以降は、科学だけがやたら進化して、あらゆる産業が地球の資源を食い尽くしていき、そのおかげで人類も平均的には豊かになった。しかし反対に資源は枯渇し、おまけに「地球温暖化」という副作用が覆い被さってきたというわけだ。この「地球温暖化」は、豊かさの追求や経済活動とは真逆のベクトルなので、人々が豊かになればなるほど、深刻度は上昇する。しかし人々は、一度手にした豊かさを手放そうとはしないので、後戻りのできない深刻な状況に陥りつつあるわけだ。


 しかし、一縷の望みはあると思う。まず、いまの社会はグローバル社会であることだ。通信や交通のスピードが速く、世界中に情報網が繋がっているので、情報はたちまち世界に拡散する。昔は国家という体制だけが世界中にバラバラと散在していたが、グローバル化で纏まりつつある。しかしいまは、さらにインターネットという根茎(リゾーム)が地球を覆っている。これは古来の国家体制と国境を越えた新たな体制の二層構造が出来上がっているということだ。仮に古来の秩序を重んじた制度的・システム的な体制を「アポロ的」なものだとすると、感覚的・感情的な新たな体制は「ディオニソス的」なものと言っていいだろう。※


 「アポロ的」な体制の代表は、国単位で参加する国際体制で、国家間の関係とか国連とかCOPなどが含まれる。これは国単位の利益(打算)が優先する極めて政治的・経済的なシステムだ。「ディオニソス的」な体制は、インターネットの根茎的な繋がりによる庶民レベルの感覚的・感情的なグローバル体制だ。つまり、いまの世界体制は、二重の構造になっているわけだ。古来の一重体制はすでに古い体制になっており、COPも国単位なので、政治的色彩の強い会議を何回開催しても埒は開かないということになる。これは国連会議でも言えることだろう。各国は、まず自国の不利益を避けようとする。しかし、インターネットでは、「地球温暖化問題」それだけを俎上に載せることができ、余分なフリルである各国の思惑などは捨象することが可能だ。直接そのものにメスを入れることができ、埒を開ける可能性があるということだ。


 昨年、全体主義国家の中国で恐らく「アポロ的」に、周近平総書記が2060年までにCO2排出量をゼロにすべく、脱炭素推進策として8月から計画停電を実施し、各地に大きな混乱を引き起こした。同時に石炭の掘削抑制や輸入規制を標榜した。これは中国政府が国際アピールを目論み、権威主義の力を借りて上から規制をかけたものだが、世界には民主主義国も多いのだから、同じことをしようものなら、たちまち政権は転覆してしまうだろう。民主国は国民の同意を得るための事前工作が必要だ。残念ながら、権威主義の中国でさえ勇み足であったことに気付いて、COP26では石炭規制に関して抵抗勢力のインドに同調した。民主国アメリカのバイデン大統領が標榜する「グリーン革命」だって、すんなりとは行かず、意気込みだけに終わってしまう可能性はある。国の最優先課題が「経済」である限りは……。


 しかし、毛沢東が中国を日本の植民地支配から解放したときは、革命的ロマン主義を掲げて人心を掌握し、「長征」などのディオニソス的とも言える戦いを中国全土に広げていったわけだ。毛沢東たちは人民の熱狂的な支持を得て蒋介石(国民党)に対する劣性を挽回した。反対に「アポロ的」な策謀的抵抗運動を展開した蒋介石は、計算尽くめの地味な持久戦を展開して人気を失い、台湾に逃れた。この「長征」の派手な勝利には、今後の環境保護活動にとって、大きなヒントが隠れているのだと思っている。民衆は派手なパフォーマンスに期待する傾向がある。これはナチス政権の派手な映像を見れば分かることだ。


 その後毛沢東は自分の権力を保持するため、「大躍進政策」や「文化大革命」などの運動を起こしたが、失敗に終わった。当然、最初の「長征」的解放運動が成功したのは、人民が植民地支配から逃れたいと心から願い、目に見えて勢いのある共産軍を選択したからで、後の二つは毛沢東の個人体制を守るための小賢しいアポロ的な押しつけだったから、人民に熱が入らず失敗したわけだ。


 古来、社会情勢や圧制などで一定の人々が圧迫されると、ディオニソス的な運動が起こってきた。古代ギリシアの「バッカスの女たち」は、集団ヒステリー状態で女たちが狂気のように踊り狂ったと言われているが、慣習的に家の中に閉じこめられていたことによる鬱屈した感情の、一時的な解放だったとされている。アメリカでは18世紀中頃、住民の間から宗教的自覚を高めようという熱狂的な「大覚醒」運動が沸き上がり、いまのアメリカ社会にも大きな影響を残している。


 日本でも圧制などに苦しむと、農民や庶民が感情を爆発させ、罪の軽い形で集団行動に出た。江戸時代後期の「おかげ参り」や「ええじゃないか」は代表的なものだろう。これらは「集団的ヒステリー」と捉えられがちだが、単なるカタルシスではなく社会改革運動的な側面もあったに違いない。これらが思想的に統一されて、頭の良い先導者がシンボルとなって統率すれば、大規模化してロシア革命のようなことも起こり得るわけだ。大塩平八郎はレーニンほどのシンボル性を持たなかったことになる。


 地球温暖化問題は一国内にとどまらない世界的な問題だが、各国の代表が集まって協議する「アポロ的」解決に頼っても埒が開かないのは前述した。貴重な時間を費やすだけだ。各国代表の背後には旧体制由来の経済界やら利益享受団体やらがこびり付いているからだ。しかしこの期に及んでも解決方法を模索しなければ、地球が最悪の事態を招くことは目に見えている。その唯一の解決方法は、インターネットで繋がり、危機意識を共有する世界中の人々の感情的(ディオニソス的)高まりなのだと思っている。


しかし、この行動のうねりは革命的なパワーがなければ息切れしてしまう。中途半端で終わってしまえば、何の意味もない。しかも、この運動を進めれば、経済や暮らしに大きな副作用を伴うだろう。癌を駆逐する抗ガン剤のようなものだ。経済活動と環境活動のベクトルを一致させるには、多くの抵抗勢力を排除する必要がある。それらは正常細胞であると同時にガンでもある。あるいは正常細胞を装ったガン細胞かも知れない。 


 抗ガン剤が正常な細胞をも破壊するのと同じように、ディオニソス的運動は、経済の正常な部分を大きく浸食する。しかしそれは、外科手術のような暴力的革命ではなく、世界中の人々が集結した暴力を伴わない「静かな革命」だ。あるいはルターの「宗教改革」に習えば、「改革」という言葉がふさわしいかもしれない。革命のような基本的な体制を変えることではないからだ。この改革を成功させるには、かつてのレーニンや毛沢東のような、象徴的な主導者が必要だが、付き従うのは武装集団ではない。インターネットの呼びかけに応じた非武装のグローバルなプロテスト運動(社会運動)で、当然のこと、その中心はグレタ・トゥーンベリさん以外考えられないだろう。彼女に象徴としての役割を与えるべきだ。


 最近グレタさんの活動が、各国政府の喉元に刺さった棘になりつつあるという話を聞くが、いまの地球は頭に茨の冠を被せられ、釘で手足を十字架に打ち付けられた状態であることを忘れてはならない。グレタさんの活動がさらに大きなウエーブとなって、世界中の統治機構を震撼させることを願うばかりだ。



※「アポロ的」:主知的で秩序や調和ある統一を目指すさま。(例えば各国政府の打算的外交など)
 「ディオニソス的」:熱狂的、激情的とも言える感情を行動に変えるさま。(例えばインターネットで広まる危機意識からの世界的な運動)








奇譚童話「草原の光」
二十二


 アパトはみんなを頭に乗せて、山に向かって草原を一直線に進んだ。途中でいろんな肉食恐竜がやってきたけど、アパトは大きいのでティラノ以外はみんな並走してチャンスを窺ってたな。するとまたティラノが五、六頭やってきたから、アバターのアインシュタインは、立て続けに銃をぶっ放したのさ。多少ずれたって光線はちゃんと標的に当り、ティラノたちはミンチになっちまった。で、カメレオーネになっちまって逃げてった。ほかの肉食恐竜たちは、寄ってたかってミンチを食ったから、やっぱカメレオーネになってめでたしめでたしだ。いろんな肉食連中が次から次へとやってくるから、山に着くまでに百頭以上の肉食連をカメレオーネに戻してやったな。このペースで祖先帰りをやってけば、一年以内に平和だった昔のカメレオーネ星に戻るって計算だ。


 山の麓に来ると、そこは切り立った崖で、アパトと別れなけりゃならなくなった。でも、アパトは自分も昔のカメレオーネに戻りたいって言い出したんだ。
「君は大きな体が自慢じゃなかったのかい?」
「図体が大きくたって、ティラノには食われちまう。カメレオーネに戻って、山に暮らせば、いつもビクビクしていることもないしな」
「いいや、君はティラノと戦うんだ」ってウニベルが言った。
「そうよ、アインシュタインさん。祖先帰り銃を百丁作ってちょうだい。アパトは仲間の草食竜を百頭集めて。みんなで肉食連中と戦うの。いままで虐められてきた借りを返すのよ」ってステラ。
「でも、敵でもカメレオーネになったら踏みつけちゃだめだよ」ってヒカリは釘を刺した。
「そうさ、カメレオーネは仲間さ。肉食竜がみんなカメレオーネに戻ったら、君たち草食竜もカメレオーネに戻るんだ」ってケント。
「分かった。それで、仲間たちはいつ集めればいい?」
「いまでしょ!」ってアインシュタインは叫んだ。


 アインシュタインはポケットから大きな黒い袋を出して銃を放り込み、自分の鼻毛と白髪を一本引き抜いて加えると、袋の口を握って思い切り振り出したんだ。すると袋がどんどん大きくなってずっしり重くなり、中には百丁の銃が入ってたってわけさ。
「どうだい、カメレオーネもシリウス星人も分裂して増えるんだから、道具だって同じ方法で増やすことができるのさ」ってアインシュタイン。
「じゃあ仲間を二百頭集めるから、あと百丁作っといて」って言って、アパトは草原に向かって大きな声で唸り声を上げたのさ。この雄たけびは百キロ届くんだ。誰かが肉食獣に食われそうになると、こんな声を発して、そいつを聞いた仲間たちがはせ参じるってなわけだ。


 しばらくすると、遠くからすごい音が聞こえてきて、すごい数の草食恐竜がドドドッてやってきた。大小いろんな草食恐竜が集まったんで、山の中に隠れてたカメレオーネたちも驚いて、崖の上に集まってきた。そん中の太った一匹が「おいウニベル、なんでこんな所にいるんだ?」って声をかけてきたんだ。そいつは何万年以上前に別れた幼なじみのカッキオだった。カッキオは年寄りの長老として、カメレオーネ集団を統率してたんだな。


 で、話はとんとん拍子に進んだってわけさ。カメレオーネたちは、銃を持って恐竜たちの頭に飛び乗った。でもって、戦車が二百台でき上がった。もちろん、大砲は祖先帰り銃さ。で、アパトを先頭に、いざ出陣ってなったとき、遠くの方からまたドドドドッてものすごい音がしてきたんだ。そいつは肉食恐竜の群だった。連中は嗅覚が鋭いから、草食恐竜のゲップやオナラの臭いを察知して大群でやってきたんだな。草食恐竜の胃腸は年がら年中醗酵してるから、年がら年中ゲップやオナラが出るんだな。だから、見つからないようにしても、我慢ができずに一発やらかし、食われちまうってわけさ。二百頭も草食恐竜が集まれば、息もできないほど臭いから、肉食恐竜だって見過ごすわけにはいかないさ。


 で、まるで関が原みたいに、肉食軍と草食軍が東軍西軍ってな感じに鼻を付き合わせたんだ。この星の天下分け目の戦いだな。でも両軍の配置からすれば、どう見ても草食恐竜が不利だったな。だって、彼らの後ろは岩山なんだから、逃げようにも草食恐竜たちは象さんの足みたいで登れないんだ。
 でも祖先帰り銃っていう最強兵器があるから、慌てなかったな。これさえあれば、相手がいくら強くても食われることはないんだ。で、敵方の大将はバケモノみたいに大きなティラノだった。こっちの大将は当然、アインシュタインや先生たちが頭に乗ってるアパトさ。アパトはでかくても頼りないけど、先生もアインシュタインも銃を持ってるから力強かったな。


 で、先生は敵の大将に向かって「君の名は?」って聞くと、「ムスコロさ」って大きな声で答えたな。するとカッキオが「おいムスコロ、久しぶりだな」って言うんだ。
「父さん、まだ生きてたんだ!」って息子のムスコロは驚いたな。
「気安く父さんなんて言うなよ。とっくに勘当したはずだ」ってカッキオ。
 肉食恐竜の大将とカメレオーネの大将が親子だったなんて、みんなたまげちまった。
「おいムスコロ、俺っち隣のウニベル小父さんさ」ってウニベルも声をかけた。
「憶えてるぜ。よく遊んでくれたな」
「お前は賢い子で、将来は偉いカメレオーネになると思ってたんだ」
「当り! 僕ちゃん肉食恐竜の総大将だもん」
「ってことは、この星の王様じゃん」ってアインシュタインも持ち上げた。
「あんた、ヨレヨレ爺さんのくせにいいこと言うね。あんたは不味そうだから、食わんといてやるよ」
「じゃあ、カッキオは食うのかね?」ってすかさずアインシュタインは突っ込んだね。
「もちろんさ。親子の縁はとっくに切ってんだ」
「じゃあカメレオーネに戻ったら復縁するの?」ってステラはすかさず聞いたな。
「俺が? この星最強のティラノが? なんでちっこいトカゲに戻らなならんのよ」
「冗談じゃない。お前がカメレオーネに戻ったって、こっちも息子とは思わんさ。こいつは多くの仲間を食らってきた悪党なんだ」ってカッキオも反発。
「お父さん、そんなこと言わないで受け入れてやりなさいよ」ってステラ。二匹の愚にもつかない問答を聞いていたムスコロは逆上し、問答無用とばかりに「ウルセー!」って叫びながら、アパト目がけて突進してきたな。総大将が先陣を切ったんで、部下たちも遅れてなるものかと猛突進。草食恐竜軍の頭に乗ったカメレオーネたちも大きな標的に向かって祖先帰り銃をぶっ放したな。天下分け目の戦いが始まったってわけだ。


(つづく)










響月光の小説と戯曲|響月 光(きょうげつ こう) 詩人。小熊秀雄の「真実を語るに技術はいらない」、「りっぱとは下手な詩を書くことだ」等の言葉に触発され、詩を書き始める。私的な内容を極力避け、表現や技巧、雰囲気等に囚われない思想のある無骨な詩を追求している。|note
















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